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学校長メッセージ

2025.04.16

令和七年度 近大泉州高等学校 入学式 

 それでは、式辞を述べさせて頂きます。

 式辞

 春爛漫、郊外では陽光が燦燦と輝き、新入生の皆様を心より祝福してくれているかのように感じられる季節です。校庭にも桜の花が満開に咲き誇っています。

 本日、この佳き日に、保護者の皆様方、ご来賓の皆様方、PTA会長様をはじめとする役員の方々、多くの関係者の皆様方のご臨席を賜り、令和七年度 学校法人泉州学園、近畿大学泉州高等学校 第五十三回入学式を挙行できますことを大変うれしく思います。

 改めて、新しい制服に身を包まれた新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、この日を待ち望み、ご子息、お嬢様の成長を支えてこられた保護者、ご家族の皆様方にも心からのお祝いのメッセージを送りたいと思います。本日はご入学、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。

 本校は一九七三年に泉州銀行頭取を務めていた創立者、佐佐木勇蔵先生が心に抱いた「経済と教育は両輪の如く」の思いを具現化するために、自然に恵まれた神於山(こうのやま)のふもとに学校法人泉州学園、泉州高等学校として創設されました。

 二〇〇八年に近畿大学と「二十一世紀教育連携パートナーシップ協定」を締結して、二〇〇九年には校名を近畿大学泉州高等学校に改名いたしました。こうした高大連携を通して、大学の多様な知的財産を活用し、生徒たちの「自ら考える力」「問題解決能力」「グローバルな視点と能力」を引き出す教育環境を提供してきました。

 本校は創設以来「国際性の尊重」「体育の増進」「情操教育の推進」を教育の三本柱として、世の中の一隅を照らし、次世代を背負う人物の育成に邁進しています。また、「誠実」「礼節」「友愛」の校訓は時代がどの様に変わろうが、ゆるぎのない確固たる普遍の真理で、人生の道しるべ、羅針盤であると言えるのです。これまで、この教育の下で巣立った多くの卒業生の方々は、様々な分野で活躍し、社会貢献の一助となっている学校でもあります。

 新入生の皆様には、入学式というよき日を迎えることができたのは、自分自身の努力はもちろんのこと、保護者、ご家族の方をはじめ、多くの方々の支えがあったということも、心に留めておいてほしいと願っています。皆様の温かいご支援に対し、心から感謝の気持ちを表してください。真心を込めて「ありがとう」という言葉を何度も何度もかけてください。そして、健康で、人に迷惑をかけず、楽しい高校生活を送ることで御恩返しをしてください。

 本日の入学式はある意味で、高等学校卒業までの通過点であると思うかもしれません。しかし、中学生活とは大きく異なる大人への入り口に当たる大切な節目の一日であり、未来に向かって、心の準備をしなければならない特別な日でもあります。

 中学時代は全ての面で保護者、ご家族の方々からの庇護を受けて幸せな生活をしていました。また、学校は義務教育であり、国から教育を受ける権利が保障され、進級、卒業についても何の心配もなく、周りから保護される環境の中で、学校生活を送ってきました。しかし、高校生活になれば、中学生活とは違って全ての面で、自分で考え、自分で判断を下し、その結果責任も自分で負わなければなりません。言い換えれば、高等学校は自分自身の心次第で、様々なことに積極的にチャレンジすることが可能で、視野が広がり、大きく成長できる夢舞台です。つまり、何事も、人に頼らず、主体性をもって行動し、自立しなければならないことが、中学時代と大きく変わるところです。

 新入生の皆さんがこれから歩む道は絶えず変わり続け、予測不能な未来が待っています。超情報化時代・Society5.0に突入し、 Aiの出現により、学び方や働き方は激変し、世界情勢や世界経済は不安定を極めています。地球温暖化と自然災害は一向に歯止めが効きません。少子高齢化が急速に進行し、それに伴い、海外から国内に多くの人材が流入しています。このような変化が絶えず起こり続け。これまでの閉鎖的な社会は終焉を迎えようとしています。つまり、人種、国籍、性別、文化といった、異なる価値観が入り乱れる、多様性の中で生きていくということを意味しています。皆が同じ、皆が一緒ということがあり得ない世界です。違うことが当たり前、それぞれが異なる価値観を持つのが当たり前の世界です。多様性は発想を豊かにし、新しい価値観を生み出します。。異なるバックグラウンドを持つ多様な人々が社会の原動力となる時代が目の前に来ています。

 この社会状況に対応するため、日本の教育界も教育の変革に乗り出し、文部科学省は従来の知識偏重型教育から二十一世紀型教育・「対話的な深い学び」の実践を提唱しています。その内容は知識・技能、いわゆる、「読み、書き、そろばん」に加えて、思考力・判断力・表現力を育み、あらゆることに主体性を持って、様々な人々と協働して学ぶ態度を身につけることであるとされるのです。

 今後、高い評価を受けるのは、ただひたすら高い偏差値を求めるのでなく、様々な人々と協力しながら、主体性を持って人生を切り拓いていく力、どんな状況でも自分で考えて問題を解決する人間力なのです。つまり、これまでの固定概念が働き方の基盤になっていた「マニュアル型人間」ではなく、「時代や社会環境の移り変わりに即応し主体的になって様々な人々と協働できる人間」なのです

 このような先行き不透明な状況の中で、これから高い目標を抱いて、人生の基盤作りとなる高校生活を送る新入生の皆様に、心に留めていただきたい三つのことを話しておきたいと思います。

 一つ目は「自分の個性に気付き、それを伸ばすこと」」です。

 新入生の皆さんには、一人ひとりの個性があり、それぞれが違った能力を持ち、誰もがみんな違う大きな可能性を秘めています。二度と戻ることのない大切な青春を謳歌するとともに、この可能性に精一杯挑戦し、未見の我を発見してください。「未見の我」とは、「まだ自分のことが見えていない、まだ自分のことがよく分かっていない」という意味です。

 作家の山本有三氏は、「路傍の石」という小説を書いています。『路傍の石』とは、「道の片隅に捨てておかれた、取るに足らない、つまらないもの」を意味します。しかし、小さな様々な形の石が存在するからこそ「路」が在るのだと説いています。人間社会も同様で、集団を構成しているのは一人ひとりの人間です。それぞれの人間には個性、特徴があります。そのような個々が存在するからこそ大きな集団である社会が存在するのです。この小説の中で、主人公に「たった一人しかいない自分の、たった一度しかない人生を、本当に生かさなかったら、人間、生きてきた甲斐が、ないんじゃないか」と言わせています。「自分を生かす」ということは、「自分で自分の個性や能力を発見し、それを磨き、伸ばして、人のために世のために尽くしていく」ということです。そういう意味で、 これからの高校生活は、「自分を生かし、大人になっていく自立への旅」と言えると思います。是非、「未見の我」に気づいて、豊かな人生を歩むことができる礎となる心構えを育んでください。

 二つ目は「お互いの特性、個性を認め合う素直な心を培う」と言うメッセージです。

 人には誰しも尊い特性、個性があります。学校という共同生活にあっては、それぞれの素晴らしい違いを素直に認め、リスペクトすることが何よりも大切です。あなた方は、一人ひとりがこの世にたった一人しかいない存在です。また、同様に周りのお友達も世界中にたった一人しかいない仲間です。あなた方はご縁があって同じ学校で生活することになりました。人には長所と短所があります。他人の欠点・短所はすぐに見つけることができるけれども、自分のそれにはなかなか気づくことができないのが人として悲しいところです。集団生活の中では、ややもすると「自分中心に物事を見る」という、狭い、頑な考えが生ずることがあります。それは、人、それぞれに価値観が異なり、立場や状況も違うからです。しかし、私たちは社会の中で、たった一人で生きているわけではなく、お互いに助け合い、支え合って、日々の暮らしをしています。自分の考えが正しい、あるいは自分だけが苦労しているなどと思っていると、相手が間違っている、楽をしていると錯覚してしまいがちです。自分と違う意見や考え方に出くわした時は、自分の物の見方や発想に新たな視点が加わったと思うべきです。どうか、自分だけの物差しで判断するのではなく、相手の立場に立って考えることや、人の意見に、素直に耳を傾ける姿勢を大切にしてください。いずれにしても、これから始まる高校三年間の学びを通して、皆さんが「春風のような、温かな心」で、人に接し、「北風のような、やや厳しい心」で、自分を見直すことができる素直で、心豊かな人に成長することを、心より願っています。

 三つ目は「時の流れを大切にして、約束を守る」と言うことです。

 学校生活や社会生活で、友達や周りの人々と友好的な関係を構築するためには、時の流れを大切にして、約束時間を守るとする時間の観念が大切です。私たちは時間について、時々不平を言うことがあります。人を待っていて、その人がなかなか現れない時には、「一〇分は長いな」と時の流れを長く感じて、不平を言うことがあり、また、楽しいことをしているときに「一〇分は短いな」と時の流れを短く感じ、不満を言うこともあります。しかしながら。時には、不平等を感じるこの世の中で、最も平等なのが時の流れであるのです。一日の長さは、世界中どこでも同じです。時の流れは老いも若きも関係なく、天才も凡人も、富める人も貧しい人も変わりなく、過去も現在もやはり同じです。それを時が経つのが早いと焦ったり、遅いと愚痴を言ったりするのは、人の勝手な受け止め方で、時間を使う自分の心のあり様、心がけの問題であると実感しています。平等に与えられている時間を支配しているのは誰でしょうか。あなた、彼、彼女ではありません。自分自身が時を自由に扱う権利を持っているのです。時の流れを有効に使えるか否かは、自分の心次第です。また、平等に与えられた時間の使い方次第で、大きな影響を受けて、一人ひとりの成長に、大きな差が出てきます。時の流れ、時間を大切にして、約束を守る心構えは、健全な学校生活を営み、高い学力をつけるうえで、欠かすことのできない大切な要素です。

 是非、自分の個性を伸ばし、お互いの特性、個性を認め合う素直な心を育み、時の流れを大切に、約束を守る習慣を身に付けてください。このような心構えを育むことができるか否かはあなた方の心のあり様にかかっています。

 今日、近畿大学泉州高等学校は心豊かに育ってくれる新入生を迎えることになりました。高校生活の三年間は長い人生を鑑みれば、ほんのひと時かもしれませんが、これからの生き方を左右するとても大切な期間です。何事にも全力で取り組み、多くの経験を積んでください。楽しいことも、悔しいことも、つらいこともあるでしょう。また、感動することも、がっかりすることもあるでしょう。こ学校での様々な経験を通して、将来大人になった時に、自分の人生の原点は「近畿大学泉州高等学校にあり」と思えるようなものであって欲しいと願っています。

 さあ、新たな夢舞台は整い、未知のステージの幕が上がりました。このステージであなた方がどんなパフォーマンスをしてくれるか、新しい真っ白なキャンバスにどのようなデッサンをし、どのような色付けをしてくれるのか、楽しみで一杯です。あなた方の成長を期待しています。三年後わが校を巣立つ折には「我が母校近畿大学泉州高等学校」「我が心のふるさと泉州学園」と声高らかに誇れるように、充実した学校生活を歩んでくれることを心よりお祈りいたします。

 結びに、保護者の皆様方におかれましては、どうぞ、本校の教育活動にご理解を賜り、二人三脚でご子息、お嬢様の成長を支えていくことができますようご協力、ご支援のほどお願い申し上げます。

 本日の入学式が挙行することができたことに感謝するとともに、新入生の皆さん、保護者、ご家族の皆様方、本日ご縁をいただいている皆様方、全ての皆様方のご多幸とご健勝を心よりお祈りし、式辞とさせていただきます。

 

 令和七年四月五日

         近畿大学泉州高等学校 校長 堀川 義博

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