学校長メッセージ
2025.01.25
3学期始業式 1月7日
皆様、新年あけましておめでとうございます。良いお正月を迎えることができたでしょうか。今日は第三学期の始業式です。三学期の始まる一月は暦の上では新しい一年のスタートです。心をアップデートしてください。
令和七年の新しい年が明け、爽やかな新春の雲一つない空を見上げて、何よりも全ての人々が、大過なく、健やかで過ごせる一年でありますようにと祈りたくなりました。また、それぞれの人々が抱いた夢や願い事が実現することを心から願うばかりです。「一年の計は元旦にあり」と言われています。おそらく、ほとんどの人が行く年来る年を感じながら、除夜の鐘が鳴ると同時に何かしら心が弾み、希望に満ちた新たな気分を感じたと思います。また、各地の神社、仏閣にお参りをして、それぞれの願いをお祈りし、抱いた目標が成就するように心から手を合わせたことと思います。どうか、新年とともに改まった豊かな心を大切にして下さい。
かつて、私はチベット密教のダライラマ法王に謁見できる機会を得ることができました。お話の中で特に心に残った言葉がありました。それは、「日本では良い日、悪い日、大安、仏滅と区別する風習があります。それはけじめをつける意味ではとても良い習慣だと思います。しかし、人は自分の意思で良い日に生れることができません。大切な日、良い日は自分が志を立てた日である」とおっしゃったことです。どうか新年を迎え、志を豊かにした心を大切にして三学期を過ごしてください。
今日は三学期の始業式に当たって、数年前にノーベル平和賞を史上最年少で受賞されたマララ・ユスフザイさんの話をしたいと思います。昨年は日本原水爆被害者団体協議会、通称被団協が受賞されました。日本にとっては悲願の受賞であり、この受賞は世界の人々に平和をもたらす起爆剤になると確信しています。
マララさんはパキスタン出身の女性です。パキスタンでは様々な社会、政治情勢の下で女性は充分な教育を受けることができない状況にありました。その環境中で、女性差別を訴えていたマララさんは一五歳の時に、中学校から帰宅するスクールバスの乗っていたところを武装集団に襲撃されました。頭と肩に銃弾を受けましたが、奇跡的に回復し,一命を取り止めることができました。その後、ゆるぎない信念でフェミニストとして、女性差別を訴え、人権活動家として活躍され、ノーベル平和賞を受賞されました。彼女の活動の中で、特に人々の心を魅了したのが国連での演説スピーチです。特に有名なのがこの英語のフレーズです。
One child, one teacher, one pen and one book can change the world. Education is the only solution. Education First.
So, here I stand. One girl among many.
I speak, not for myself, but for all girls and boys.
「一人の子ども、一人の教師、一本のペン、一冊の本、それで世界を変えることができます。教育こそがただ一つの解決策。教育こそが第一、一番大切です。私はここに立っています。数多くの人たちの中で一人の少女です。私は訴えます。自分自身のためではありません。全ての少年少女のためです。」
このスピーチは多くの人々に大きな感動を与えました。この言葉の中には二つの意味が込められています。その一つは差別についてです。世の中には国籍、人種、ジェンダーなど様々な差別があります。しかしどのような差別であっても絶対に許されるものではありません。なぜなら、差別は最初から結論が決まっているからです。何かにつて話し合いをするとき、「私が高くて、貴方が低い」とする考えで話を進めれば、最初から結果が決まっていて、正しい結論を出すには最終的には暴力でしかないのです。
差別、蔑視というのは「自分中心に物事を見る」とする考えのことです。自分の我儘で勝手な考え方で、人の意見も聞かず、配慮もしない姿勢のことです。人は日常生活のさまざまな場面で自分中心の見方をしています。それは、人、それぞれに考え方が異なり、立場や状況も違うからです。しかし、私たちは社会の中で、たった一人で生きているわけではなく、お互いに助け合い、支え合って、日々の暮らしをしています。自分の考えが正しい、あるいは自分だけが苦労しているなどと思っていると、相手が間違っている、楽をしていると錯覚してしまいがちです。自分と違う意見や考え方に出くわした時は、自分の物の見方や発想に新たな視点が加わったと思うべきです。世の中に助けられ、支えられている自分に気づき、より多くの意見や考え方を吸収してください。
二十一世紀は対話の時代です。対等の立場で、同じ目線で討論することが大切です。これまで述べたような心構えを身につけるには、心を豊かにすることが重要です。豊かな魂、豊かな心を身につけるには、もちろん、積み重ねた知識、技能を基にした高い教養が必要です。また、高い教養を身につけるには、やはり豊かな心、心のフレームが大きいことが必要です。この二つは車の両輪であって、片方が欠ければ前に進むことができません。
マララさんが国連でのスピーチで話された「Education First」「教育が一番」 とする教育とは、まさに「高い教養と豊かな心」を育み、それぞれの個性を認め、引き延ばすことであると確信しています。まさしく、本校の校訓にある「誠実・礼節・友愛」の心と同様です。
彼女のスピーチにはもう一つの趣旨が込められています。それは、全ての人々には社会の基盤を作る教育を受ける権利があると主張していることです。しかし、現状は、まだ教育を受けることのできないところが世界の各地で存在します。しかし、あなた方は幸いにも、何の苦労もなく、当たり前のごとく、教育を受けています。あなた方には教育を受ける権利が保障されています。しかしながら、権利の裏には義務が生じていることを明確に理解しておくことが大切です。教育を受ける権利に対する義務とは、高い教養を身につけ、周りの人々と助け合い、協調して、対等の立場で、同じ目線で対話できる豊かな心、フレームの大きな心を育むことです。
令和七の幕が上がりました。新年とともに改まった豊かな心を大切にしてほしいと切に願っています。しかし、生涯にわたる大きな目標を実現させ、夢を達成するためには、目の前の「今」できる小さなことに向かって一歩一歩着実に取り組む努力をすることが何よりも大切です。人間は弱いもので、目標を立てて、すぐに出来ることほど先延ばしにする傾向にあります。すぐに出来ることを「これは、また、何時でも出来るは、後からしよう。」と先延ばしに、これを積み重ねることで、結果、大きな禍、痛手、失敗となって自分に返ってくることがよくあることです。「何時も出来ると思う心は大事を見逃す元である」の言葉を心に留めて、出来ることは積極的に取り組んでほしいと思います。
掲げた目標を達成するためには「努力」が必須条件です。「努力」は嘘をつきません。努力する過程を大切に「一歩先へ」に進んでください。
最後に三年生の皆様にエールを送りたいと思います。
既に、次のステージが決まっている生徒がいます。今こそ、次の舞台で楽しく、有意義なパフォーマンスを演じることが出来るよう、残り少ない落ち着いた学校生活を送ってください。
これから受験を控えている皆さんにとっては、十八日、十九日が大学入学共通テスト、その後、私立大学一般入試、さらには個別に二次試験と続きます。今が本当の正念場、胸突き八丁、勝負の時です。目標に向かって努力しているプロセスに価値を見出して頑張ってください。これまで頑張ってきた努力の成果が順当に出るように心から祈っています。自分を信じて、心豊かにして試験に臨んでください。そして、後に続く下級生たちに希望と勇気を与えてください。下級生、後輩の皆さんも心から先輩の皆さんに「がんばれ!」のエールを送ってください。
令和七年も皆様に幸せが訪れるよう、心よりお祈りいたします。
以上で話を終わります。