学校長メッセージ
2025.03.03
令和六年度 第五十回 近畿大学泉州高等学校 卒業証書授与式
皆さん お早うございます。式辞の前に、一言、申し上げます。
本日の卒業証書授与式は、めでたく、例年通り挙行することができました。ここに、改めて、保護者の皆様方、ご来賓の皆様方、PTA会長をはじめとする役員の方々、多くの関係者の皆様のご臨席を賜り、卒業証書授与式を挙行できますことを心より感謝申し上げます。また、卒業生の皆さんの出身中学校の校長先生にも錦上に花を添えていただき深く御礼申し上げます。感謝いたします。
それでは、式辞を述べさせて頂きます。
「春風や、幸せ運べ、この子らに」
校庭の木々の蕾もほころび始め、神が宿る、ここ神於山にも春の息吹が感じられ、木立にさえずる小鳥の声にも明るさが増してきました。まさに、世の中の一隅を照らそうとする志を鼓舞するかのように、光り輝く時期を迎えています。
この佳き日に、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜り、ここに記念すべき、令和六年度 学校法人泉州学園、近畿大学泉州高等学校 第五十回卒業証書授与式を、盛大に挙行できますことは、大きな喜びであり、まことに感謝に堪えないところであります。心から厚く御礼申し上げます。
「高等学校卒業」という人生の節目を迎え、未来に向かって大きく羽ばたこうとしている百二十九名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。希望と不安が惜別の思いに交錯し、複雑な気持ちの中で、新しい出会いを求めて、胸を弾ませている心境ではないかと思います。皆さんは三年間、勉学は勿論、学校行事や部活動、その他さまざまな活動において素晴らしい成果を残し、近畿大学泉州高校の歴史に新たな一ページを書き加えてくれました。何事にも一生懸命に、誠意溢れる姿勢で取り組まれた皆さんの努力に対し、称賛の拍手を送りたいと思います。そして、私たち教職員に多くの感動と、この学校で奉職する喜びを与えてくれたことに対し、心から感謝します。本当にありがとうございました。
卒業生の保護者の皆様、ご子息、お嬢様が送られた高校生活において、語り尽くせぬ多くの喜びと、多くの御心配、御苦労があったことと思います。注がれた惜しみない深い愛情が、ここに実を結び、卒業式を迎えられたことに対し、敬意と感謝の気持ちを込め、お祝いの言葉を申し上げたいと存じます。「ご卒業、誠におめでとうございます。」
今後、お子様達は、山あり谷ありの人生を歩むことになりますが、人生で悩んだ時に一番の心の支えになるのは保護者の方々の心です。「いつも、我々の心は貴方の心の傍にあるのよ」と声をかけていただき、寄り添っていただくことで、お子様たちは幸せな道を歩むこと出来ると確信しています。
只今、百二十九名の卒業生の皆様に、本校における高等学校教育課程を修了したことの証として、栄えある卒業証書を授与させて頂きました。それぞれの卒業証書には我が学び舎で育んだ人を愛する、人を思いやる心「豊かな心」が宿っています。保護者、ご家族の深い愛情、私たち教職員のあなた方に対する末永く、幸多かれと、心より祈る思いが籠っています。きっと、一生涯あなた方の側にあり続け、心の支え、拠り所になってくれるでしょう。
本日、卒業証書を手にすることができたのは、一人ひとりの努力があったことはもちろんのことですが、その陰には多くのお力添えや愛情があったからです。とりわけ、保護者、ご家族の皆様の庇護は何事にも替えがたいものです。
卒業生の皆さん、今日まで手塩にかけ、温かく見守り、育てていただいた保護者、ご家族の皆様に感謝しましょう。真心を込めて「ありがとう」という言葉を何度も何度もかけてください。いくら感謝しても、感謝し過ぎることはありません。是非、保護者、ご家族の皆様にご恩返しをしてください。あなた方にできる一番のご恩返しは健康で、人に迷惑をかけずに、楽しい人生を送ることです。これが最高の恩返しです。
さて、あなた方が歩んだ三年間の高校生活を振り返ってみると、新型コロナ感染症の影響を受けながらも、充分な対策を講じて、学校行事、学年行事をほぼ通常に実施することが出来ました。幸いにも実施することができた人々を誘う華やかな文化祭や体育大会では、日々の集団生活で培った力を結集し、見事、大輪の花を咲かせ、高校時代にふさわしい青春の一ページを飾ってくれました。
また、四年ぶりに実施することが出来た高校二年時のハワイ修学旅行においては、実施目的を充分に理解し、異文化交流をはじめ、様々な体験を通して、一生忘れることのない感動と感謝の念を享受し、友人間の親睦を高め、豊かな心を育んでくれました。
さらに、高校一年時のスキー実習では、大自然の中でスキーを楽しみながら、互いに支え合う協働性を培い。高校二、三年時の学習合宿においては、進路実現を達成するための「心の高まり」を感じ取ることが出来たと思います。これら全ての経験は卒業と同時に、それぞれの脳裏に深く焼き付き、生涯忘れることのない宝物、財産に変わり、これからの人生の糧となると確信しています。
卒業生の皆さんがこれから歩む道は絶えず変わり続け、予測不能な未来が待っています。超情報化時代・Society5.0に突入し、 Aiの出現により、学び方や働き方は激変し、世界情勢や世界経済は不安定を極めています。地球温暖化と自然災害は一向に歯止めが効きません。少子高齢化が急速に進行し、それに伴い、海外から国内に多くの人材が流入しています。このような変化が絶えず起こり続け、これまでの閉鎖的な社会は終焉を迎えようとしています。つまり、人種、国籍、性別、文化といった、異なる価値観が入り乱れる、多様性の中で生きていくということを意味しています。皆が同じ、皆が一緒ということがあり得ない世界です。違うことが当たり前、それぞれが異なる価値観を持つのが当たり前な世界なのです。多様性は発想を豊かにし、新しい価値観を生み出します。異なるバックグラウンドを持つ多様な人々が社会の原動力となる時代が目の前に来ています。しかし、私たちを取り巻く混沌とする社会状況の中で、全ての人々が平等に幸せを掴むことが出来る源泉は「豊かな心」です。
今日から皆様は、一人ひとりが自分自身で選択した道へ、新しい一歩を踏み出します。式辞にあたり、卒業生の皆様が幸せになることを心から念じて、三つのはなむけの言葉を贈りたいと思います。
一つ目は「常に学ぶ姿勢を忘れずに」の言葉です。
インド独立の父ガンジー首相の言葉に「明日死ぬって思っていきなさい。永遠に生きると思って学びなさい。」のフレーズがあります。これらの言葉の趣旨は、与えられた環境の中で、精一杯努力することに価値を置いて、悔いのない日々を送ることが大切であるということです。これから歩む未知の世界で自らの道を開いていこうとするならば、多様な文化に興味、関心を持ち、探求し、答えのない課題に正面から立ち向かって、解決しようとする意欲、姿勢が不可欠です。「自分は何をすべきなのか、何をしたいのか、そのためには何を学べば人として課せられた責務を果たすことができるのか」を心の底から自分に問いかけ、真摯に自分の心と対話することが必要です。
人から与えられるもの、教えられるものには限りがあり、有限です。自ら求めること、自ら学ぶことには限りがなく、無限です。あなた方には未知の力、未見の我があります。自分自身の力を信じて、たゆまぬ努力を怠らず、常に様々な分野で主体的に学び続け、時代の変化に的確に対処できるよう自己研鑽を積み重ねてください。
二つ目は「回り道も幸せに繋がる素敵な歩み方である」という言葉です
これから、あなた方が歩む道のりは常に陽のあたるバラ色の坂道だけとは限りません。山あり、谷ありの人生を歩むことになるでしょう。人生で悩んだ時に、ふと、思い出して心を癒していただきたい言葉を贈りたいと思います。それは「回り道」という三文字です。人生はいつも自分の思い通りに歩むことができるとは限りません。自分の思い通りになる時もあれば、思い通りにならない時もある。楽しい時、悲しい時の連続です。順調に進んできた全てのことに少し陰りが見え始め、これまでに経験したことのない曲がり角を迎える時があります。自信とは不思議なもので、失いかけると一気に音を立てて崩れていく、加えて不安がつのれば、自己否定の悪循環に陥ることもしばしばあることです。そんな時こそ、一旦立ち止まって、自分を見つめ直し、一度肩の荷を下ろすことも大切なことです。自分を点検する最初の機会が来たと、ポジティブに捉えることも必要です。目標を達成して、幸せをつかむ道筋には、近道もあれば「回り道」もあります。それが人の道、「人生」なのです。ともすれば、近道を選びたくなるのが人情です。しかし、後から、しみじみと幸せを感じることこそ、「回り道」の奥深さではないでしょうか。
人生は長い、焦らず、時には「回り道」の景色を味わって、ゆっくりと楽しむことも、得難い体験になるに違いないと思います
三つ目は「常に、夢見る青春の心を忘れずに」の言葉です。
私が発信してきた「一歩先へ、いつでも夢を」の精神は青春時代に抱いたような初々しい志を持ち続けて欲しいというメッセージです。
人生、百年と言われる長い人生を歩むうえで、時代や社会がどのように変わろうが、常に青春を謳歌する初々しい心を持ち続けてください。青春とは人生の一時期のことでなく、心のあり様のことです。若くあり続けるためには自主性、創造力、情熱、勇気が必要です。人は年齢を重ねた時に老いるのではなく、夢や理想を失くした時に老いるのです。若者であろうと、どれだけ年を重ねた老人であろうと、幼児のような好奇心、子どものような探求心、青年のようなチャレンジ精神があれば、常に青年、乙女のごとく、一歩先へと前向きな姿勢で、夢を追い続けて、素敵な人生を送ることができると確信しています。人は信念とともに若くあり、失望とともに老いるのです。希望がある限り、喜びや美しさを受け止める感性がある限り、何かを求めて心をわくわくさせる胸の高まりがある限り、永遠に若さを保つことができると思います。どうか、いつまでも泉州学園で学んだことを忘れず、常に「夢見る青春の心」を抱き続け、心豊かな人生を歩んでください。
結びに、あなた方の希望が叶うことを願って、この詩を届けます。
「念ずれば花ひらく」という仏教詩です。
念ずれば花ひらく
苦しいとき
母はいつも口にしていた
このことばを
私もいつのころからか
となえるようになった
そうしてそのたび
わたしの花がふしぎと
ひとつひとつ
ひらいていった
本学園を創設された校祖、元泉州銀行頭取、佐佐木勇蔵先生が、「経済と教育は両輪の如く」の建学の精神を提唱されてから早や五十二年の歳月が流れようとしています。あなた方は「誠実、礼節、友愛」の校訓を通じて高い教養と豊かな心を育んできました。この「泉州精神」こそが、時代がどの様に変わろうが、ゆるぎのない確固たる普遍の真理で、人生の道で迷った時に、いつでも戻れる原点、人生の道しるべであると言えます。
これからは自分で考え、自分で進むべき道を選択し、一歩先に歩み出ていかなくてはなりません。嬉しいこと、楽しいこと、達成感を味わうことよりも、悲しいこと、辛いこと、がっかりすることに遭遇することもあるでしょう。うれし涙よりも、悔し涙を流すことの方が多いかもしれません。人生は思い通り、順風満帆にいかないことを思い知らされ、「不可能の数だけ可能性がある」ことを信じていても、頬を濡らす涙が止まらない時もあるでしょう。涙でつくる小さな海で心が溺れかけることもあるかもしれません。しかし、その涙が潮を引くように、「落胆・後悔」の海から「希望」の船に導いてくれるのが、あなた方がこの学校で培った心「豊かな心」です。
青春の真っ只中を本校で過ごした歳月を忘れないでください。触れ合う人を慈しむやさしさで、磨かれた知性で、美しい振る舞いで、社会の一隅を照らして下さい。
あなた方の過ごした学び舎には人を愛する、人を思いやる心が宿っています。いつまでもあなた方の足跡が残り続けるでしょう。たまには人生の羽休めとして、健康で、明るい笑顔で、母校愛を届けに来てください。これからも、常に「我が母校近畿大学泉州高等学校」「我が心のふるさと泉州学園」と、声高らかに誇れるように、充実した楽しい生活を送ってくれることを切に願うとともに、卒業生の皆様に幸多かれと心よりお祈り申し上げます。
卒業生の皆様、どうか健康で、幸せになってください。
令和七年二月二十八日
近畿大学泉州高等学校 校長 堀川 義博