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学校長メッセージ

2025.03.03

近畿大学泉州高等学校新聞(令和六年度)

校訓「誠実・礼節・友愛」の「豊かな心」は幸福の源である

近畿大学泉州高等学校 校長 堀川 義博

 「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」「平家物語」の語り出しの有名な一句です。「諸行無常」とはお釈迦様が説かれた仏教の核心に触れる言葉の一つです。この教えは、人生のすべての瞬間が一時的であり、変化が不可避であることを受け入れることの重要性を説いています。この「諸行無常」の教えを受容することにより、私たちは過去への執着や未来への不安から解放され、現在(いま)に集中し、その瞬間を大事にできるようになります。これは、同時にストレス、不安、恐れを減らし、マインドフルネス(幸福感)を育むことにも繋がると言われています。この教えを心に留め、日々の生活に活かすことで、心の健康と幸福感を向上させてください。

 今年も様々な心が弾む楽しい出来事、哀しい出来事が起こりました。中でも心弾む嬉しいことはパリでオリンピック、パラリンピックが開催され、日本選手団が素晴らしい成果を残していただいたことです。多くの人々が各選手の活躍に勇気をもらったと思います。また、政治の世界も大きく変わりました。内閣総理大臣、日本の首相が岸田首相から石破首相に引き継がれました。日本の新しいリーダーの基、日本がますます繁栄し、全ての人々が幸せになることを願うばかりです。さらに日本原水爆被害者団体協議会、通称被団協が本年度のノーベル平和賞を受賞されました。日本にとっては悲願の受賞であり、この受賞は世界の人々に平和をもたらす起爆剤になることを願っています。

 さて、今年度の学校行事を振り返ってみると、体育祭、文化祭、芸術鑑賞、高校二年生のハワイ修学旅行を始めとする各学年の行事などを大過なく実施することが出来ました。

 中でも、本校で最大のイベントである体育祭、文化祭では、待ちに待った夢舞台で、クラス、クラブが日頃から培ってきた成果をいかんなく発揮し、高校時代にふさわしい青春の一ページを飾ってくれました。この成功裏には、生徒の皆さんが大人数で一つのことをまとめ上げるためにお互いを思いやり、助け合い、対等の立場で、同じ目線で、語り合う心を学んでくれたお陰であると確信しています。

 加えて、高校二年生のハワイ修学旅行においては、異文化交流をはじめ、様々な体験を通して、一生忘れることのない感動と感謝の念を享受し、友人間の親睦を高め、豊かな心を育むことが出来ました。また、高校一年生のスキー実習では、大自然の中でスキーを楽しみながら、互いに支え合う協働性を身に付け、高校二年生、高校三年生の学習合宿においては、進路実現を達成するための「心の高まり」を感じ取ることが出来たと思います。

 次に、教育に目を向けると、文部科学省は教育改革に取り組み、二十一世紀型教育である「対話的な深い学び」を提唱しています。この変革にはますます激化するグローバル化、一人ひとりの個性が尊重される多様化に対処しなければならない背景があります。今、求められているのは知識・技能(読み書き・そろばん)を基にして、思考力・判断力・表現力を身に付けて、様々な人々と主体的になって協働する真の人間力です。また、この力を強化するためには、心の教育、情操教育もこれまで以上に重要視されています。

 本学園を創設された校祖、佐佐木勇蔵先生が高等教育の大切さを提唱されてから早や半世紀以上の歳月が流れました。校祖が唱えられた建学の精神は「経済と教育は両輪の如し」であり、教育理念は「誠実・礼節・友愛」の校訓に込められています。この理念を通して、豊富な知識に溢れ「豊かな心」を育む教育はまさしく「対話的な深い学び」の具現化となっています。

「豊かな心」とはフレームの大きな心であり、五つの心から成り立っていると解釈することができます。

・一つ目は命を大切にする心

 私たちは自らの意志で両親や時代や社会を選ぶことはできません。私たちの生命は授けられたものであり、ゆえに、自分の命を大切にするとともに、周りの人々の命も大切にして、お互いに、助け合い、支えながら人生を歩もうとする心です。

・二つ目は人を愛し、思いやり、感謝できる心

 自分が在るから周りが在るのではなく、周りが在り、周りの支えが、助けがあるからこそ自分が在る。だから、周りの人々を愛し、思いやり、心から感謝できる心です。

・三つ目は対等の立場で語れる心

 二十一世紀は対話の時代です。対等の立場で、同じ目線で、対話できることが大切です。友達と仲良くすることができる心、つまり、いじめとか、差別をしないで、対等の立場で、同じ目線で話ができる心です。

・四つ目は一歩先へ、いつでも夢を、明日に希望を求める心

世の中で、どんなに立派な人でも、どんなに徳を積んだ人でも、どんなにお金持ちでも、悩みを持っていない人はいません。また、人生はいつも幸せで右肩上がりでもありません。楽しいとき、悲しいとき、山と谷の連続です。人生の谷に落ちたときに「こんないいことはいつまで続かない。こんな悪いこともいつまでも続かない。」と思って、希望の中に幸福を見出して、投げやりにならないで、知恵を使って冷静に対処する心が大切です。

・五つ目、最後は、主体的になって学ぼうとする心

人から与えられるもの、教えられることには限りがあり、有限です。自ら求めるもの、自ら学ぶことには限りがなく、無限です。自ら掲げた目標を達成できるか否かは自らの「心」に掛かっています。

 この豊かな心、フレームの大きな心を育むことが、幸せで、豊かな生活を送るうえで最も大切な資質である信頼を得ることができる秘訣であると確信しています。

 高校三年生の皆さんは三年間の学業を終えられ、いよいよ通いなれた学び舎を後にし、新たなステージに上がろうとしています。ご卒業、誠におめでとうございます。

 これから歩む人生は常に陽のあたるバラ色の坂道だけだとは限りません。楽しい時、悲しい時の連続です。自分の思うように事が運ぶこともあるし、思う通りにいかないこともあります。山あり谷ありの道のりです。人生で悩んだ時に、ふと、思い出して心を癒していただきたい言葉を贈りたいと思います。それは「回り道」という三文字です。楽しい時、悲しい時の連続です。順調に進んできた全てのことが少し陰りが見え始め、これまでに経験したことのない曲がり角を迎える時があります。自信とは不思議なもので、失いかけると一気に音を立てて崩れていく、加えて不安がつのれば、自己否定の悪循環に陥ることもしばしばあることです。そんな時こそ、一旦立ち止まって、自分を見つめ直し、一度肩の荷を下ろすことも大切なことです。自分を点検する最初の機会が来たと、ポジティブに捉えることも必要です。目標を達成して、幸せをつかむ道筋には、近道もあれば「回り道」もあります。それが人の道、「人生」なのです。ともすれば、近道を選びたくなるのが人情です。しかし、後から、しみじみと幸せを感じることこそ、「回り道」の奥深さではないでしょうか。人生は長い、焦らず、時には「回り道」の景色を味わって、ゆっくりと楽しむことも、得難い体験になるに違いないと思います。それには、「豊かな心」がベースにあるのが必須です。

 卒業生の皆さんにとっては、近畿大学泉州高等学校で過ごした日々は掛け替えのない青春を謳歌した人生の一ページであったと思います。人生で最も華やかな二度と戻ることのない大切な一瞬を互いに思いやり、助け合った友達と学校生活を共有できたことを誇りに思ってください。桜が咲き誇る時季に胸を躍らせて入学してから早くも卒業の時を迎え、今まさに、泉州学園での学校生活に終止符を打とうとしています。この間においては楽しいこと、悲しいこと、感動したこと、がっかりしたことなど様々な経験を味わったことでしょう。おそらく、全ての経験は卒業と同時に、それぞれの脳裏に深く焼き付き、生涯忘れることのない自分自身にしか感じられない宝物に変わっていると思います。

 卒業式という晴れ舞台を迎えるにあたり、忘れてはならないことは紆余曲折の学校生活の中で、温かく見守っていただいた両親、保護者の深い愛情です。授けていただいた真心に心から感謝しましょう。報恩感謝とは、感謝して御恩に報いることです。これから歩む人生を豊かに歩み、人に迷惑をかけず、健康で、楽しい生活をして、幸せになることによってご恩返しをしてください。

 新たな夢舞台は整い、未知のステージの幕が上がりました。このステージであなた方がどんなパフォーマンスをしてくれるか、新しい真っ白なキャンバスにどのようなデッサンをし、どのような色付けをしてくれるのか、楽しみで一杯です。あなた方の成長を期待しています。あなた方の過ごした学び舎には人を愛する、人を思いやる「豊かな心」が宿っています。いつまでもあなた方の足跡が残り続けるでしょう。これからも、ともに歩んできたこの学び舎を「わが母校、近畿大学泉州高等学校」「わが心のふるさと泉州学園」と声高らかに誇り、自信をもって「豊かな心」を余すところなく発揮し、大いに活躍され、幸せになられることを心より念じています。

 結びに、卒業生の皆様に幸多かれと切に願うとともに、保護者の皆様方、在校生を始めとして、ご縁を頂いている全ての方々のご健勝を心よりお祈り申し上げます。

 

 

 

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