学校長メッセージ
2024.10.15
令和6年度入学式 4月6日
それでは、式辞を述べさせて頂きます。
式辞
春爛漫、郊外では陽光が燦燦と輝き、新入生の皆様を心より祝福してくれているかのように感じられる季節です。校庭にも桜の花が満開に咲き誇っています。
本日、この佳き日に、保護者の皆様方、ご来賓の皆様方、PTA会長様をはじめとする役員の方々、多くの関係者の皆様方のご臨席を賜り、令和六年度 学校法人泉州学園、近畿大学泉州高等学校 第五十二回入学式を挙行できますことを大変うれしく思います。
改めて、新しい制服に身を包まれた新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、この日を待ち望み、ご子息、お嬢様の成長を支えてこられた保護者、ご家族の皆様方にも心からのお祝いのメッセージを送りたいと思います。本日はご入学、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
本日、めでたく、入学許可を与えられました新入生が共に顔を合わせ、希望に満ちた笑顔で、この入学式を迎えています。これから、高校生活を送るうえで、お互いに尊重し合い、支え合い、また、切磋琢磨して、学業とクラブ等の課外活動の両面で、研鑽に努めてくれることを切望しています。
本校は一九七三年に泉州銀行頭取を務めていた創立者、佐佐木勇蔵先生が心に抱いた「経済と教育は両輪の如く」の思いを具現化するために、自然に恵まれた神於山(こうのやま)のふもとに学校法人泉州学園、泉州高等学校として創設されました。
二〇〇八年に近畿大学と「二十一世紀教育連携パートナーシップ協定」を締結して、二〇〇九年には校名を近畿大学泉州高等学校に改名いたしました。こうした高大連携を通して、大学の多様な知的財産を活用し、生徒たちの「自ら考える力」「問題解決能力」「グローバルな視点と能力」を引き出す教育環境を提供してきました。
本校は創設以来「国際性の尊重」「体育の増進」「情操教育の推進」を教育の三本柱として、世の中の一隅を照らし、次世代を背負う人物の育成に邁進しています。また、「誠実」「礼節」「友愛」の校訓は時代がどの様に変わろうが、ゆるぎのない確固たる普遍の真理で、人生の道しるべ、羅針盤であると言えるのです。これまで、この教育の下で巣立った多くの卒業生の方々は、様々な分野で活躍し、社会貢献の一助となっている学校でもあります。
本日の入学式はある意味で、高等学校卒業までの通過点であると思うかもしれません。しかし、中学生活とは大きく異なる大人への入り口に当たる大切な節目の一日であり、未来に向かって、心の準備をしなければならない特別な日でもあります。
新入生の皆さんは、これまで、小学校、中学校の九年間の義務教育の中で、幸いにも、当たり前のごとく、教育を受けてきました。教育を受ける権利が保障されていたのです。また、保護者の方をはじめ、周りの様々な人々が、いろんな配慮をして、あなた方の前に安全で好ましい、幸せに通ずる一本のレールが引かれていました。そして、あなた方はその一本のレールの上に乗り、一生懸命歩めばよかったのです。しかし、通常の社会では目の前には何本もの道が開かれていて、どのルートを通れば幸せになれるかは全く不透明な状態です。そんな中で、自分自身の判断で、一つのルートを選択しなければなりません。これからの、「義務」という冠が取れた高校生活では、あらゆることにおいて、その都度、自分で判断し、選択していくことが余儀なくされます。一方、それと同時に、選択したその結果については、自らの責任で対処しなければならない結果責任の義務があることを心得ていただきたいと思います。言い換えれば、高等学校は自分自身の心次第で、様々なことに積極的にチャレンジすることが可能で、視野が広がり、大きく成長できる夢舞台です。しかし、何事も、人に頼らず自立しなければならないことが、中学時代と大きく変わるところです。
さて、外に目を向けてみると、これからはグローバル化がますます進展し、ひとり一人の尊い個性が尊重される多様化、ダイバーシティの社会を迎えます。この激しく変化する社会を円滑に推し進めるため、今は「ICT」を駆使した「Society 5.0」超情報化時代の段階に突入しています。
このような背景の中で、現代社会では、グローバルな視点と知的創造力によって、人類の持続可能な発展に繋がる新しい発見や技術等を生み出すことのできる人が求められています。これまで、正解を求める知識偏重型学習が中心でありましたが、今後は正解のない問題に、正解が複数ある事象に対処できる能力が必要になっているのです。これからの社会で必要とされる人は、これまでの固定概念が働き方の基盤になっていた「マニュアル型人間」ではなく、「時代や社会環境の移り変わりに即応し主体的に様々な人々と協働できる人間」へと変化しています。
この社会状況に対応するため、日本の教育界も教育の変革に乗り出し、文部科学省は従来の知識偏重型教育から二一世紀型教育・「対話的な深い学び」の実践を提唱しています。その内容は知識・技能、いわゆる、「読み、書き、そろばん」に加えて、思考力・判断力・表現力を育み、あらゆることに主体性を持って、様々な人々と協働して学ぶ態度を身につけることであるとされるのです。
今後、高い評価を受けるのは、ただひたすら高い偏差値を求めるのでなく、様々な人々と協力しながら、主体性を持って人生を切り拓いていく力、どんな状況でも自分で考えて問題を解決する人間力なのです。
これから目標を抱いて、人生の基盤作りとなる高校生活を送る新入生の皆様に、三つのことを心に留めていただきたいと思います。
一つ目は「一人ひとりが未見の我に気づき、それを育み、互いに認め合う」と言うことです。
この世に生を受けた人には誰しも尊い特性、個性があります。学校という共同生活にあっては、それぞれの素晴らしい違いを素直に認め、リスペクトすることが何よりも大切です。あなた方は、一人ひとりがこの世にたった一人しかいない存在です。また、同様に周りの友人も世界中にたった一人しかいない仲間です。さらに、新入生の皆さんには、それぞれが違った能力と特技をもち、誰もがみな違う大きな可能性を秘めています。この可能性に精一杯挑戦し、未見の我を発見してください。「未見の我」とは、「まだ自分のことが見えていない、まだ自分の ことがよく分かっていない」という意味です。これから歩むことになる高校生活の中で、まだ先が見えていない、まだ分かっていない自分の個性や能力を発見して、それを育て、鍛え、伸ばしてほしいと願っています。また、周りに存在する同級生一人ひとりにもその人自身も気がついていない「まだ見ぬ彼、彼女」が眠っています。自分自身を大切にすると同時に、「未見の我」を持つ同級生も大切に思い、互いに個性を認め、豊かな人間関係を築いてください。
二つ目は「与えられた環境を大切に、素直な、豊かな心を育む」と言うことです。
落ち着いて豊かな、楽しい学校生活を送るためには、与えられた「今」の環境の中で精一杯努力することが大切です。私たちは自らの意思で、自分に合った環境や社会を選ぶことができません。与えられた「今」ある環境の中で、「今」を無駄にしないで夢を抱き、目標を立て、人生を歩むことが求められています。ややもすると、「今」置かれている環境をすべて否定し、隣の庭が美しく、対岸の岸が天国に見えるかの如く勘違いをすることがあります。これは自分の努力不足が招いた結果を素直に認めず、その結果を責任転嫁しようとし、常に愚痴や不平、不満を言ったり、相手を責めたりすることによって、責任逃れをしようとする悲しい心の在り方です。このような貧しい心は結果的に自己否定に、自分の損に繋がってしまうことになりかねないのです。「努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る」という言葉があります。この言葉は私たちの人間の心の在り方を端的に表しています。目標を抱いて、前向きに、ポジティブに物事をとらえる人は人から好かれ、尊敬されるが、一方、常に不平や不満を抱くことは自分のためにもならないし、周りの人々にも不愉快な感じを与えてしまうことになりかねないのです。また、集団生活の中では、ややもすると「自分中心に物事を見る」という、狭い、頑な考えが生ずることがあります。どうか、自分だけの物差しで判断するのではなく、相手の立場に立って考えることや、人の意見に、素直に耳を傾ける姿勢を大切にしてください。いずれにしても、これから始まる高校三年間の学びを通して、皆さんが「春風のような、温かな心」で、人に接し、「北風のような、やや厳しい心」で、自分を見直すことができる素直で、心豊かな人に成長することを、心より願っています。
三つ目は「時の流れを大切にして、約束を守る」と言うことです。
学校生活や社会生活で、友達や周りの人々と友好的な関係を構築するためには、時の流れを大切にして、約束時間を守るとする時間の観念が大切です。私たちは時間について、時々不平を言うことがあります。人を待っていて、その人がなかなか現れない時には、「一〇分は長いな」と時の流れを長く感じて、不平を言うことがあり、また、楽しいことをしているときに「一〇分は短いな」と時の流れを短く感じ、不満を言うこともあります。しかしながら。時には、不平等を感じるこの世の中で、最も平等なのが時の流れであるのです。一日の長さは、世界中どこでも同じです。時の流れは老いも若きも関係なく、天才も凡人も、富める人も貧しい人も変わりなく、過去も現在もやはり同じです。それを時が経つのが早いと焦ったり、遅いと愚痴を言ったりするのは、人の勝手な受け止め方で、時間を使う自分の心のあり様、心がけの問題であると実感しています。平等に与えられている時間を支配しているのは誰でしょうか。あなた、彼、彼女ではありません。自分自身が時を自由に扱う権利を持っているのです。時の流れを有効に使えるか否かは、自分の心次第です。また、平等に与えられた時間の使い方次第で、大きな影響を受けて、一人ひとりの成長に、大きな差が出てきます。時の流れ、時間を大切にして、約束を守る心構えは、健全な学校生活を営み、高い学力をつけるうえで、欠かすことのできない大切な要素です。
是非、自分の個性を伸ばし、与えられた環境の中で素直な心を育み、時の流れを大切に、約束を守る習慣を身に付けてください。このような心構えを育むことができるか否かはあなた方の心のあり様にかかっています。
今日、近畿大学泉州高等学校は心豊かに育ってくれる新入生を迎えることになりました。高校生活の三年間は長い人生を鑑みれば、ほんのひと時かもしれませんが、これからの生き方を左右するとても大切な期間です。何事にも全力で取り組み、多くの経験を積んでください。楽しいことも、悔しいことも、つらいこともあるでしょう。また、感動することも、がっかりすることもあるでしょう。近畿大学高等学校での様々な経験を通して、将来大人になった時に、自分の人生の原点は「近代泉州高等学校にあり」と思えるようになって欲しいと願っています。
さあ、新たな夢舞台は整い、未知のステージの幕が上がりました。このステージであなた方がどんなパフォーマンスをしてくれるか、新しい真っ白なキャンバスにどのようなデッサンをし、どのような色付けをしてくれるのか、楽しみで一杯です。あなた方の成長を期待しています。三年後わが校を巣立つ折には「我が母校泉州学園」「我が心のふるさと近畿大学泉州高等学校」と声高らかに誇れるように、充実した学校生活を送ってくれることをお祈りいたします。
結びに、保護者の皆様方におかれましては、どうぞ、本校の教育活動にご理解を賜り、二人三脚でご子息、お嬢様の成長を支えていくことができますようご協力、ご支援のほどお願い申し上げます。
本日の入学式が挙行することができたことに感謝するとともに、新入生の皆さん、保護者、ご家族の皆様方、本日ご縁をいただいている皆様方、全ての皆様方のご多幸とご健勝を心よりお祈りし、式辞とさせていただきます。
令和六年四月六日
近畿大学泉州高等学校 校長 堀川 義博